鹿島建設株式会社「Field Browser」×「Work Mate」試行運用から共創の未来へ
2021.07.20
今回は、「Work Mate」の活用事例をご紹介させていただきます。
鹿島建設株式会社 土木管理本部 生産性推進部長 横尾 敦さま
2021年2月に「Work Mate」の建設現場での試行運用を開始。本格的な熱中症の実証実験は2021年夏に行いますが、鹿島建設が「Work Mate」を試行運用に選んだ理由や、今後の目標について詳しく伺いました。(取材:2021年6月)
鹿島建設は、3年程前から人、モノ、重機や環境情報を見える化する統合管理システム「Field Browser」を展開し、これまで20を超える現場で実装しています。「Work Mate」の試行運用 は、「人」の管理の向上を目指すために行われています。
■実施場所:
西日本高速道路株式会社
新名神高速道路 枚方工事
■実施期間:
2021年3月1日〜1年間を予定
■実施対象:
現場作業員20名
「Work Mate」が試行運用に選ばれた理由
横尾さま:まずは「Field Browser」から簡単に説明させていただきます。デジタルツイン、IoTの観点で、建設現場が製造業と大きく異なる点は、「現場で起きていることをリアルタイムで把握するのが難しい」という点です。工場や鉄道であれば、いま、作業や運行が順調に進んでいるか、どこで止まっているのか、などがすぐにわかります。しかし、従来の建設現場では、現場のどこに誰がいて、どんな作業を行っているかをリアルタイムに把握することが難しいため、“あとになって報告を受ける”のが通常でした。そこで、3年前から“まずは、現場を”見える化”しようということで「Field Browser」の開発をスタートさせました。人、モノ、重機の状況がリアルタイムでわかれば、より能動的な対応ができるようになります。土木の場合は屋外作業が主ですから、周辺道路の渋滞状況や天候を把握することも重要です。つまり、人、モノ、重機、渋滞状況、天候をリアルタイムに把握することで、問題や課題をタイムリーに把握することができ迅速に対応できるのです。さらに、これらの情報に加えて重機の稼働率も把握できれば、無駄な稼働を減らすこともできます。
横尾さま:バイタルウオッチを作っているメーカーはいろいろありますが、ユビテックさんからは、現場の熱中症対策などに役立てようとする強い姿勢を感じています。自らデータを取って分析・研究されていますし、現場に寄り添ってくれているので、センサーの不具合などがあれば「大丈夫ですか?」とすぐに連絡をくれます。「こういうしきい値で、こういう管理画面で見たい」といった現場の声も聞いてくれます。
「Work Mate」の熱中症対策のポイント、活用状況
大内(株式会社ユビテック代表取締役社長):「Work Mate」は、自社で得た数値をさまざまな知見をお持ちの方のご意見を踏まえて現場で活用いただいています。その中でも熱中症対策については、バイタルの数値とWBGT値の見える化にとどまらないように、「熱中症の予兆を検知する」アルゴリズムにしています。危険な状態になる前に注意喚起ができるので現場でのリスク管理になります。
もちろん、アラートを受け取ったあとは、休憩することが一番大切ですが、「回復しました」ということもわからないといけないですね。その両方のアラートを発報することで効率的に現場の運用管理に使っていただけます。
横尾さま:まず、使用感については今のところ大きな問題はないと思っています。ただ、あまりにも警告頻度が多ければ作業に支障が出るので、どういうタイミングで適切に警告を出せるかについて現場条件に合わせていく形で調整しているところです。いま、枚方の現場で試行していますが、恐らく枚方だけでは完結しないとは思っています。
大内:現場ごとの環境や作業内容、その時に何をしているかによっても違ってきますし、もちろん人によっても違いがあります。そういった違いは永遠の課題だと思っていて実証を続けているところです。 体調管理に関しては、日々進化して、アップデートしていかなくてはならないと考えています。お客さまにとって有効なデータであることが大切であり、常にデータが増えることを考えて組み込んでいかなければいけないと思っています。
「Field Browser」×「Work Mate」シナジーに期待
横尾さま:私たちは、バイタルウオッチだけが欲しいわけではなく、“バイタルデータを活用したサービス”が欲しいということでユビテックさんと一緒に取り組んでいます。“Vital as a Service”になればよいなと思っています。また、我々は大学の先生にも相談しているのですが、「ユビテックさんのデータは興味深い」とおっしゃっていました。 今後、「Field Browser」では、いま現場で何が起きているかだけでなく、今日はどこまで作業が完了したかを把握できるようにしたいと考えています。それがわかれば、翌日以降の計画に反映することができます。また、バイタル情報と作業実績を分析することで、それぞれの作業に対する作業者の負担を把握できると思います。将来的には作業者のウェルネスといった指標で現場作業が評価される時代がくるかもしれません。
大内:さまざまなデータを集めて、建設現場を含めた作業現場全体に活用できるようにお返ししていきたいと考えています。われわれはデータを生かす会社ですから、現場できちっと活用されていくようなサポートをしていくことが使命だと思っています。
横尾さま:初めに聞いてびっくりしたのですが、ユビテックさんはバイタルウオッチを作っている会社ではなくて、ウオッチそのものはその時々に良いものがあれば使って、しきい値の調整や、データの活用法などソリューションを提供している企業さんですよね。「このバイタルウオッチを使いたい」ではなくて、これからは「このサービスを受けたい」ということになると思います。その相手がユビテックさんだと良いですね。
現場に関する状況をすべて「見える化」しようとしている鹿島建設さま。ユビテックは、「人」へのアプローチに支援を続けてまいります。
これからの季節は熱中症対策が、待った無しの状況になります。「Work Mate」が建設業の課題解決に貢献していくことができればと考えています。